新約聖書(New Testament)と歴史


目次

はじめに

1、新約聖書の内容

2、新約聖書には

27冊の文書がおさめられています

3、正典化(canonization)の歴史

4、海外の聖書翻訳の歴史

5、日本の聖書翻訳の歴史


はじめに

新約聖書(日本語wikipedia)は、イエス生誕後に書かれたもので、旧約聖書と同等の価値をもつ、キリスト教の正典(Canon、日本語wikipedia)です。ユダヤ教では新約聖書は正典とみなされていません。

紀元1世紀から2世紀に、新約聖書におさめられている27の文章は、キリスト教徒たちにまとめられました。その当時小アジアやギリシャで普及していたコイネー・ギリシャ語(共通ギリシャ語)で書かれました。イエスはギリシャ語ではなく、アラム語を話していたといわれています。

 


1、新約聖書の内容

イエスの生涯と教えの記録(福音書とよばれる)、初代教会の歴史(使徒言行録、使徒の働き)、パウロやヨハネ、ペテロなど、初代教会の使徒たちの手紙からなっており、最後にヨハネ黙示録でイエスが再び地上にこられる(再臨)ことを語ります。

 


2、新約聖書には27冊の文書がおさめられています

新約聖書には、27の文章がまとめられています。著者、成立場所、成立時期はそれぞれ異なります。最も最初に書かれたのは、福音書よりも、パウロの手紙ではないかと、考えられています。

 


3、正典化(canonization)の歴史

ある宗教において、信者が従うべき基準となる書籍を正典といいます。様々な手紙や文章が、初代教会で乱立していたのに、なぜ今の新約聖書に含まれている27の文章が選ばれたのでしょう。

新約聖書の正典選択作業は、マルキオンが最初とされています。しかし彼は旧約聖書を排除し、ルカによる福音書とパウロの手紙のみを、正典化しました。彼についていくものは多くなく、異端として排除されてしまいます。

著者は不明で、170年から210年頃ギリシア語で書かれたとされる、新約聖書に収めるべき文書であるリストをまとめた断片である、ムラトリ正典目録(wikipedia)が発見されています。

現在の新約聖書と一致する一覧表が現れるのは、アレクサンドリアのアタナシオス(

(wikipedia、296年頃—373年)の367年の書簡(復活祭書簡 39)です。教会の会議である、ヒッポ教会会議(393年、北アフリカの現アルジェリアの都市アンナバ、英語wikipedia)で正典が確認され、397年のカルタゴ教会会議(英語wikipedia、Councils of Carthage)において、27書が正典だと承認されました。

 


4、海外の聖書翻訳の歴史

382頃、ローマ教皇の要請で、アンティオケ教会の教父であったヒエロニムスは、ギリシア語からラテン語へ翻訳しました。この聖書をウルガタ「ラテン語:editio Vulgata」といいます。1445年、このウルガタ聖書を底本に、ドイツのヨハネス・グーテンベルクは、活版印刷技術を用いて印刷しました。この聖書を、グーテンベルク聖書と呼ばれています。

 

14世紀にオックスフォード大学教授であったウィクリフは、ラテン語から英語への翻訳をします。ただし、彼自身がしたのか、信奉者がしたのかは、定かではないとされています。

 

16世紀には、宗教改革がおこり、マルティン・ルター(1483-1546)は聖書をドイツ語に翻訳します。1534年に、ドイツ語旧約聖書・新約聖書が出版されます。

 

1611年には、イングランド王ジェームズ1世は、イングランド国教会の標準訳を求め、翻訳された聖書として、欽定訳聖書(King James Version)があります。

 

英語の聖書はどれがおすすめ?

ー翻訳の種類と特徴による比較・分類ー

https://fortheperson.jp/study/texts-books/english-bible/




5、日本の聖書翻訳の歴史

日本聖書協会のHPには次のように書いています。
日本における聖書の歴史は、1549年フランシスコ・ザビエルが初めて鹿児島に上陸した時に持って来た日本語に訳された「マタイ福音書」に始まると言われている。しかし、現在記録は残っていない。


カール・ギュツラフ(日本語wikipedia、1803-1851)は、中国で活躍したドイツ人宣教師です。中国にいたギュツラフは日本人3人の漂流漁民から日本語を学び、聖書の一部を出版しました。

日本聖書協会のHP には次のように書いています。翻訳は、1835年12月より始まり、翌年11月に完成した。この聖書は、現存する最初の日本語聖書として有名なギュツラフ訳の「ヨハネ伝」「ヨハネ書簡」である。


1873年9月に第一回在日宣教師会議(長老派、改革派アメリカン・ボード(日本語wikipedia))がひらかれ、

ジェームス・カーティス・ヘボン(James Curtis Hepburn、日本語wikipedia)

ブラウンを中心に『明治元訳聖書』(日本語wikipedia)が出版されます。1875年から出版され、1880年に新約聖書翻訳が完成しました。旧約聖書は1887年に完成します。

 

1917年には『改訳 新約聖書』が出版され、これを『大正改訳聖書』(日本語wikipedia)とよばれています。新約聖書のみ出版され旧約聖書は出版されていません。

 

1955年には、『口語訳聖書』(日本語wikipedia)が日本聖書協会より出版されます。第二次世界大戦後、口語訳の聖書としては、初めての聖書です。それまでは、文語訳の聖書でした。

 

20世紀以降カトリックとプロテスタントが共同で翻訳する聖書が出版されてきました。1987年に出版された『新共同訳聖書(New Interconfessional Version)』(日本語wikipedia)は、カトリックとプロテスタントの共同翻訳です。現在、日本で広く普及されている聖書翻訳とよばれています。

 

2018年年12月3日、カトリックとプロテスタントの共同翻訳である、『聖書協会共同訳聖書(Japan Bible Society Interconfessional Version)』(日本語wikipedia)が出版されました。


→フランシスコ会訳、新改訳2017や、リビングバイブルなどの翻訳は、日本語訳の聖書に書いています。