宗教は時に自分たちが絶対に正しく相手を従わせがちになる危険性があります。しかしイエスはそうであってはならないと教えました。逆に相手に仕えなさいといわれたのです。
イエスは彼らを呼び寄せて言われた。「あなたがたも知っているとおり、異邦人の支配者と認められている者たちは、人々に対して横柄にふるまい、偉い人たちは人々の上に権力をふるっています。しかし、あなたがたの間では、そうであってはなりません。あなたがたの間で偉くなりたいと思う者は、皆に仕える者になりなさい。
マルコの福音書 10章 42〜43節
聖書 新改訳2017©2017新日本聖書刊行会
~仕える(διάκονος、ディアコノス、英語ギリシャ語辞典サイト)とは、謙虚な人です。決して思い上がらず傲慢になりません。傲慢とは相手に「こうであるべき」と要求しますが謙虚さは「あなたはあなただから良い」と相手を受けとめ気持ちに耳をかたむけることだと思います。人は言葉や説教を必要としているのではなく、耳を傾けてくれる友人を求めていると思います。
ディアコノスは付添人(attendant)とも翻訳できるそうです。イエスは今日もわたしたちに仕えてくださり、支えていてくださいます(マルコ10・45)。
また、あなたがたは教師と呼ばれてはならない。あなたがたの教師はただひとり、すなわち、キリストである。 そこで、あなたがたのうちでいちばん偉い者は、仕える人でなければならない。 だれでも自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされるであろう。
マタイによる福音書 23:10-12 口語訳
~人は「なんでも自分は知っている」と思い込んでしまいがちです。分からないことも、分かったふりをしてしまうことがあります。しかし、その時成長はとまってしまうのではないでしょうか。分からないことがあってもいいのではないでしょうか。
聖書では、「先生とよばれてはならない」といいます。宗教が気をつけなければならないのは、上から目線になって「まるで先生」になってしまうことだと思います。イエスは罪人ととよばれる人に寄り添いました。上から裁くのではなく、一人ひとりの存在を大切にしました。教えることも大切です。しかし、相手を理解し、共感することはもっと大切ではないでしょうか。イエスの態度にならい隣人に耳を傾け、共に助け合う日でありますように。
※ギリシャ語メモ
καθηγητής(ギリシャ語英語辞典サイト)は新約聖書で2回のみ使用されています。
空の鳥を見なさい。食べ物の心配をしていますか。種をまいたり、刈り取ったり、倉庫にため込んだりしていますか。そんなことをしなくても、天の父は鳥を養っておられるでしょう。まして、あなたがたは天の父にとって鳥よりはるかに価値があるのです。
マタイの福音書 6:26 リビングバイブル
~私はよく失敗するので、「つまらない存在だ」と思うのが癖になっています。しかし、聖書をひらき耳を傾けるとき、「あなたには価値がある(valuable)。神さまはあなたを大切に作った」という呼びかけが聞こえ励まされます。価値があるとは、「あなたがいてくれて、本当に良かった」という神さまの喜びだと思います。何か「できる」からではなく、あなたがいてくれるだけで、神さまは「あなたは大切な存在」と呼んでくださると思います。自分の考えに縛られると落ち込みますが、「あなたには価値がある」というイエスの言葉を大切にして「嬉しいな」と思いすごしてゆきたいです。
ギリシャ語メモ
・「価値がある」は原形がディアフェロー、διαφέρωという動詞の複数形使用されています。一人だけに価値があるのではなく、一人一人に価値がある、とイエスはいわれたのでしょう。
新約聖書で13回使われています。
https://www.billmounce.com/greek-dictionary/diaphero(英語ギリシャ語辞典)
意味
~よりも価値がある、運ぶ、広がる
違う
使用場所(一部)
マタイ 10:31、12:12
ルカ 12:7、12:24
使徒 13:49、27:27
コリント第一 15:41
ピリピ人への手紙 1:10など。
用例
・広がる
こうして、
主の言葉はその地方全体に広まった。
使徒言行録 13:49 新共同訳
・違う
太陽の輝き、月の輝き、星の輝きがあって、それぞれ違いますし、星と星との間の輝きにも違いがあります。
コリントの信徒への手紙一 15:41 新共同訳